デヴィッド・ドブキン監督作「ジャッジ 裁かれる判事」("The Judge" : 2014)[BD]

母の葬儀で帰郷した悪徳辣腕弁護士が、事故を装った殺人の嫌疑をかけられた判事の父の弁護を担う事になり、その過程で父を始めとする愛する人達との蟠りを解消していく様を描くドラマ作品。

シカゴの弁護士ヘンリー・”ハンク”・パルマーは、金持ちの弁護を専門に扱い、黒をも白に変える事で悪名高く、検察すら手を焼く辣腕家。しかし、妻リサとの関係は断絶し、娘ローレンの親権を巡って離婚協議が進む。6月、ハンクは担当する裁判の予審開廷直前に、母メアリーの死を知る。ハンクは予審の延期を申し出ると、インディアナ州の故郷カーリンヴィルへと20年ぶりに帰省する。

ハンクはメアリーの亡骸と対面した後、タイヤショップを経営する兄グレンと自閉症で映画作りに執着する弟デールと再会する。その後、ハンクは地元の法廷に赴き、父で判事のジョセフの審理を見守る。その中で、ハンクはジョセフが廷吏の名を忘れたのを見て、記憶力の翳りを疑う。審理の後、ハンクはジョセフと久方ぶりの再会を果たすが、その対応の素っ気なさに不満を抱く。

実家にグレンの家族とデール、そしてハンクが一同に介する。ハンクは物置と化した自分の部屋に泊まる。翌朝、ハンクは葬儀の前に馴染みのダイナーを訪ね、かつての恋人サムと再会する。葬儀を恙無く終えたその夜、ハンクはジョセフが禁酒を破っている事を察知し、廷吏の名を忘れた件と共にグレンに伝える。ハンクが翌朝始発の便で帰る事を告げると、ジョセフはハンクに帰郷の礼を述べ、車で買い物に出かける。ハンクはグレンに誘われ、デールを連れバーへ繰り出す

3人はジョセフとの思い出話に花を咲かせる。その最中、不良集団が絡んできて、地元の功労者であるジョセフを詰る。ハンクは憤慨し詰め寄るグレンを制止すると、舌鋒鋭く相手を言い包め、退ける。ハンクはその様子を見ていた若い定員カーラと親しくなり、キスをする。

翌朝、実家を発つ直前のハンクはジョセフの車に衝突の跡を見つけ、兄弟に知らせる。ハンクはジョセフが飲酒運転で事故を起こしたと主張するが、ジョセフはハンクの離婚を論って詰る。憤慨したハンクは、即座に出発する。帰りの便の離陸直前に、ハンクはグレンから連絡を受け、州道で遺体が発見され、ジョセフが保安官に連行された事を知る。

ハンクは舞い戻り、保安官事務所を訪ねると、ジョセフに対する尋問に立ち会う。ジョセフは保安官の企みを見透かし、ジョセフに沈黙を促すが、ジョセフはそれに反抗し、コンビニに行った後の記憶は確かではないが轢いてないと主張する。尋問を終えると、ハンク達はジョセフを連れて帰路に就く。酒を克服したと言い張るジョセフに、ハンクは相手が急に飛び出してきたと証言する様に指南する。しかし、ジョセフはハンクによる助言を頑なに拒む。ハンクはシカゴの審理の延期を要請する。

翌日、ジョセフの車のグリルから被害者ブラックウェルの血痕が出た事で、ジョセフは第二級殺人罪の容疑で逮捕される。保釈直後のジョセフに、ブラックウェルの家族が詰め寄る。ブラックウェルはかつてのグレンの同級生で、16歳のホープと交際するも喧嘩が原因で銃を乱射し、逮捕された。ブラックウェルは法廷で泣いて詫び、二度としないと誓った事で、判事ジョセフはそれを信じて温情を与え、刑を最短の30日としたのだった。ところが、出所の日の朝、ブラックウェルはホープを池に連れ出し、溺死させた為、今度は20年の刑が課され、4月に出所したばかりだった。

状況証拠が揃っている事から有罪を確実視するハンクに、ジョセフは覚えが無いの一点張りの為、ハンクは作戦を立てて、予審で不起訴に持ち込み裁判を回避すべきだと告げる。ジョセフはその方針に反発し、まともな弁護士なら事故で処理すると主張する。帰宅を翻意したハンクは、ジョセフが雇ったという弁護士ケネディの事務所へ同行する。ケネディは真面目だが陪審裁判の経験に乏しく、頼りない男で、ハンクは先行きに不安を覚える。

予審当日、証人への尋問が始まる。ブラックウェル側の弁護士は州外からやってきたやり手のディッカムで、ハンクは不甲斐ないケネディに対する口出しの度が過ぎ、退廷させられる。目撃証言と検察の提示した証拠を勘案し、裁判にかける相当な理由があると判断される。ハンクはディッカムの狙いが、地元の功労者であるジョセフの評判を下げる事だと睨む。

ケネディは助手へと降りる意向をジョセフに示す。ハンクはジョセフに家と逆方向に向かった理由を問い質す。ジョセフは帰り道が洪水だと知り、引き返して州道に戻ってからの記憶が無い事を打ち明けると、ハンクに正式に弁護を依頼する。ハンクはジョセフを連れて、事故現場に赴くと、タイヤ痕が無いことから、検察が故意に轢いたと主張する事を予測する。ジョセフは飲酒を否定すると、これまでメアリーにしか明かさなかった結腸ガンを打ち明け、数回の化学療法で治療が終わると告げる。ハンクは化学療法による能力低下で陪審員の同情を買うべきだと提案するが、ジョセフはそれにより、去年自らが出した判決の信頼性が揺らぎかねない事を危惧し、晩節を汚すくらいなら獄死を選ぶと主張する。ジョセフは事故であり、法的に問題は無く、逃げる必要は無いと強弁するが、ハンクはこれでは弁護にならないと嘆く。その後、ハンクは路上でサムの車と遭遇し、同乗するカーラが娘だと知る。カーラは父親を知らず、DCの大学で法律を専攻している事を明かす。

陪審員の選定が始まると、ハンクは首尾よく丸め込みやすい人物を選び出す。ローレンが週末を過ごす為に、シカゴからやってくる。ジョセフは孫娘ローレンとの初めての対面に甚く喜ぶ。ハンクはグレンが事故により手を痛め、大リーガーの道を絶たれた事をローレンに話す。

ハンクは被告人として初めて証言台に立つジョセフに綿密なリハーサルを求めるが、ジョセフは不要だと突っぱね、その態度にハンクは呆れる。ハンクはサムのダイナーを訪ね、旧交を温める。2人は距離を縮めるものの、地元を愛し、地元で生きてきたサムと、地元を離れたハンクとでは息が合わずに口論が生じる。

翌日、ハンクはジョセフの主治医と会う。医師は化学療法の影響で記憶障害が生じる事を認めた上で、治療を隠したいというジョセフの希望を尊重する意向を示し、ジョセフが末期ガンだと打ち明ける。ジョセフの医者嫌いの為に発見が遅れ、治療はメアリーが勧めたのだという。その夜、ジョセフは嘔吐と失禁に見舞われ、駆け付けたハンクが介抱する。その一方で、ハンクはローレンがハンクとリサの離婚を多感に察知していた事を知る。

翌日、シカゴに戻るローレンを空港で見送ったハンクは、ローレンがカーラと同じ仕草をするのを目の当たりにする。ハンクはカーラが自分の娘では無いかと疑い、アルバムを紐解き、逆算すると、その可能性に困惑する。

審理が始まり、証人に対する尋問が行われる。ハンクはブラックウェルが酒酔いで自転車を蛇行運転していた可能性を導く。ディッカムはブレーキ痕が無い事を故殺の根拠に挙げるが、ハンクは衝突しても痕が残らない可能性を挙げて反論する。

その夜、ジョセフは記憶混濁に見舞われ、喚き出す。介抱に駆け付けたハンクは、これまでに会った最高の弁護士の話を促す。ハンクは自らの師匠を挙げ、ジョセフは法を尊ぶ気高く偉大な男と称するヘンリー・ショーを挙げる。

翌日、コンビニの監視カメラの映像から、ブラックウェルとは逆の方向に向かったはずのジョセフが、洪水を確認するには早過ぎるタイミングで、引き返していた事が判明する、ディッカムはジョセフが嘘を付いていると主張し、故殺を証明できると告げ、ハンクに10年の刑で手打ちする様に要求する。ディッカムはかつてハンクが弁護人として担当した、大企業の息子による殺人事件の裁判で、検察側の助手だった事を明かし、敵意を剥き出しにすると、ハンクとジョセフが法を笠に着て嘘をつく点でそっくりの偽物だと詰る。ディッカムは法だけが人間を平等にするという信念を説き、ブラックウェルの様なろくでなしの命でさえ軽くは無いと告げ、ジョセフに第一級殺人罪を課すと誓う。

インディアナを大嵐が襲う。一家は地下室に退避し、家族を撮った古いフィルムを鑑賞する。その一部を見てジョセフは激昂し、階上に飛び出る。ハンクはジョセフの後を追い、嘘を付いていた事を責める。ハンクは法科大を首席で卒業した時に、式にジョセフが訪れず、自分を褒めることすらしなかったと非難するが、ジョセフは学費を出したのは自分だと反駁する。ハンクは17歳の時に自動車事故を起こし、検察に社会奉仕を勧められたのに、ジョセフが少年院送りにした事を論うが、ジョセフはそれが自業自得であり、そのせいでグレンが大リーガーへの夢を絶たれたのだと明かす。

嵐が過ぎ、ハンクはメアリーの墓を訪ねた後、サムの元を訪ねる。カーラの父親が誰なのか問い質すハンクに、サムは突然町から消えたハンクを忘れ、前に進む為にカーラに嘘を伝えた事を明かす。その後、ハンクはジョセフと酒を飲み交わし、和解する。

翌日、陪審員に監視カメラの映像が見せられる。ジョセフはコンビニの中でブラックウェルと遭遇した時の状況を思い出すと、昏倒し、病院へ搬送される。ジョセフはハンクを病室に呼び入れ、事故を覚えていないが、自らが殺したと主張する。ハンクはジョセフが倫理観に背ける人間では無いと説き、黙っている様に促すが、ジョセフは証言を決意する。弁護しようが無いと呆れるハンクに、ジョセフは記憶に無いことは証言しないと約束する。

回復したジョセフは再び出廷し、証言台に立つ。ハンクはジョセフの長年に渡る判事としての経歴を詳らかにし、事故の日が妻の葬儀の日であった事をジョセフに確認する。一方、ディッカムはジョセフがブラックウェルに憎しみを抱いていたという心証を陪審員に与えようと企み、正義の釣り合いを取ろうとしたのではないかと問い質す。ジョセフが殺した覚えは無いと主張し、ディッカムは尋問を終えるが、ジョセフは更に証言を続け、「轢いた覚えは無い」と故意で殺した事を認める。ハンクは咄嗟に再尋問に臨み、轢いた記憶が無いのは末期ガンの化学療法が原因だと明らかにする。憤慨したジョセフはハンクの解任を告げるが、裁判長は証言の続行を促す。ハンクはジョセフに記憶障害があり、半年間の自らの下した判決が誤りとされるのを恐れたのだと明かす。ジョセフはコンビニでブラックウェルに妻を侮辱された事だけは覚えているものの、轢いた記憶が無いことを打ち明け、陪審員の同情を買う。ハンクは最初にブラックウェルに温情を与えた理由をジョセフに問い、半年は服役させるべきで罪が軽過ぎたと主張する。ジョセフはブラックウェルの姿がハンクと重なり、助けてやりたくなったのだと打ち明ける。ハンクは尋問の最後に、ジョセフと旧知の間柄である廷吏の名前を聞くが、ジョセフは思い出せず、記憶障害が確認される。

裁判は結審し、評決を待つ事になる。ハンクはサムにカーラの父が自分では無いかと尋ねる。サムは父がグレンで、ハンクが去った後、淋しさを埋める為に一度だけ関係を持ったが、グレンはその事を知らないと明かす。サムは今も昔と変わらぬハンクへの愛を伝える。

評決の日、ジョセフは第一級殺人では無罪となるが、故殺で有罪判決が下され、4年間の服役を命じられる。ジョセフはグレンとデールを励まし、刑務所に送致される。シカゴに戻ったハンクは、心変わりの末に検察に敗れる。

7ヶ月後、恩赦の嘆願にディッカムが応じ、ジョセフは釈放され、ハンクが迎える。湖に訪れた2人は、昔の様に釣りに興じようとボートに乗り、昔語りを始める。ジョセフは最高の弁護士がハンクだと告げる。ハンクが釣りを始めた矢先、ジョセフは座ったまま息を引き取る。

ハンクはローレンを連れて葬儀に参席する。ジョセフの功が称えられ、町には半旗が掲げられる。ハンクは法廷に訪れ、長年に渡り、ジョセフが判事として座っていた椅子の前に立つ。

 

 

リーガル・サスペンス系かと思いきや、親子愛をメインに描いた人間ドラマ系の作品だった。ロバート・ダウニー・Jrはすっかりアイアンマンのイメージだが、本作の様な役どころではその演技派ぶりを遺憾なく発揮する。都会派のスマートさで、根っこの部分にある家族や郷里への愛を覆いながら、騙し騙し生きてきた、そんな人間臭い男を巧みに演じている。ロバート・デュヴァルも御年80を過ぎていながら、圧巻の頑固親父ぶり。ハンクとジョセフは過去の蟠りを抱えながら、審理の方針について何度となく衝突し、その過程で父と息子として向き合っていく。そして最後に、ハンクはジョセフの自らに対する真の愛情を知る。ジョセフは死んでしまうのだが、なんとも爽やかな鑑賞後感に包まれる。ロケーションの素晴らしさも手伝って、印象的なシーンが多いのも特徴的。ほんのりコメディ要素を織り交ぜるのも、抑揚が付いて良い感じ。

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